浅草旅行記
2003年8月6日水曜日
浅草の雷門の右側で待ち合わせてオレが到着したのは1時きっかり
丁度だった。20分ほど遅れて彼女がやってきた。遅刻魔の彼女の
ために、当初12時だった待ち合わせ時刻を1時間延ばしたという
のに、なんとふてぶてしい奴だろうか。でも彼女の顔を見ただけで
待っている時間のいらいらもすっ飛んで幸せな気持ちになってしま
った。というか待ってる時間もいらいらするというよりもわくわく
という感じだった。暑いのでオレはノーパンで来た。
すぐに手を繋ごうとしたが暑いので繋がなかった。雷門を抜け仲見
世通りの店を見て回った。外人さんがいっぱいいる。雪駄が150
0円くらいで売っていたが金がないので買わなかった。財布の中身
は1500円くらいしかなかった。おもちゃやとかいろんな店を見
て暑いーとか言いながら浅草寺に。煙を体に付けるとご利益がある
とかいうやつのとこに行ったらムセた。本堂に入ると少し涼しいか
と思ったら全然そんなことなくて蒸し暑い。奥の方は涼しいらしい
が一般人は入れないようになってる。極悪坊主(ブラックモンク)ど
もが涼しさを独り占めしてるってわけだ。
庭園みたいになってるとこに行き川みたいな池を眺めて深いからオ
レだったら溺れると言った。
花やしきの近くの古い店の前で彼女の写真を一枚撮った。ポーズを
とらせないで彼女がカメラを見ないうちにパシッと撮った。大きな
空き地があり、その奥に汚いアパートがあって、その前で自分の写
真を撮ってもらおうかなと思い、ハナクソが付いてないかどうか彼
女に確かめてもらおうとしたら、彼女がオレの右の方に寄ってきて
オレは「あ〜!!」と思わず叫んだ。彼女が犬の糞を踏んでしまっ
たのだ。犬の糞踏んでる奴って久しぶりに見た気がする。ははは。
腹が減ってきたのでコンビニで食料を調達しようという事に。金が
ないのでレストランに入ったりする事ができない。でもこんな貧困
なデートが2人ともなぜか楽しくて仕方ない。彼女は迷って迷って
迷ったあげくキャベツコロッケパンを買っていた。オレはコンビニ
では結局何も買わないでそのまま歩いてたら果物屋があったのでバ
ナナを買った。
暑さが少しおさまった気がしてきて手を繋いだ。
浅草寺に戻り、二人で食っているとスズメがチュンチュンってやっ
てきた。彼女はそれを「チュン」と呼び、パンをちぎってやってい
た。オレも何か食べさせたいと思い、バナナの皮をちぎってやって
みたが少し口に含んですぐペッ!て出された。外で2人で食うのも
もう当然のようになってきてる。2人ならどこにいて何をしていて
も楽しくて仕方がない。
持ってきたCDを交換した。
もうとっくに夕方になっていた。疲れているけど帰りたくはない。
というか今回はもう最初っから野宿しようっていう暗黙の了解のよ
うなものがあった。その証拠に彼女は上着を持ってきていた。
蚊の多いトイレ行って、ampm行って「つげ義春」読んで飲み物買っ
て、浅草寺に戻った。
キスをしようと言うと彼女はゲラゲラと笑い出した。笑うな!と言
いながらキスしたら彼女がププププと笑いが止まらない。オレの目
がおかしくなっていたらしい。真面目な顔に戻してキスした。何度
も何度も舌を絡ませて舌を吸って。ドキドキした。ようやく結ばれ
た、と言ったら大げさかもしれないが嬉しかった。
神谷バーというとこで電気ブランというお酒を飲む予定だったんだ
が勃起のせいでそこに行けなくなった。もう9時半を過ぎていた。
電気ブランはオレがバイトしてお金が出来たらまた浅草に来て飲も
うねと言ってまた歩き出した。コインロッカーの前で彼女にオレの
写真を撮ってもらった。
隅田川の船乗り場の近くの丸いベンチに腰掛けた。オレは足が疲れ
ててもうボロボロだった。彼女に膝枕してもらった。上に街灯があ
ってまぶしいので顔にタオルをかけてもらい、彼女の膝の上で30
分くらい寝てしまった。それから肩揉みをしたりされたりして隅田
公園をウロウロして滑り台やうんていや回る椅子がある公園に着い
た。コーヒーカップのように自分でまわす椅子に2人で乗ってぐる
ぐる回って遊んだ。もう暗い。相撲をしたりして夜が明けた。
2003年 8月 7日 木曜日
朝になるとその公園は体を鍛えている人が集まるらしく、公園のさ
まざまな遊具を使って体を鍛えてる。おじさんとおばさんがほとん
どだったが若いのも少しいた。うんていにぶら下がってブラーンっ
てやってたり滑り台で腕立て伏せや腹筋をやってたり見てて飽きな
い。タオルを持って阿波踊りのような変な歩き方をしているおばさ
んとか変なキャラが多かった。
そろそろ場所を移そうぜってことでまた歩き出した。上からなんか
ゴミが降ってる。おかしいな、ハトが上から落としてるのかなと思
ったら彼女が小声で「違うよ」と上を指差すので何かと思ったらビ
ル窓からおばさんが少しだけ顔を出してゴミを落としながらこっち
をじーっと見ていた。凄い気味が悪かった。どんな悲惨な人生を歩
んでいるんだろう。きっと部屋にミイラ化した夫の死体が放置され
ているんだろうなぁとかそんな勝手な妄想が膨らむ。
とりあえずマックに行こうと思ったがまだ時間が早い。浅草寺でま
たしばらく休んで蚊の多いトイレに。とにかく歩いてマックを探し
た。足の疲れはいつのまにか取れていた。マックが見つかったので
8時の開店時間まで待ってた。メルヘンチックなおばあさんが先に
入っていった。8時の1分くらい前にオレらも入った。オレはホッ
トケーキ&ソーセージセット、彼女はソーセージマフィンセット。
昨日はバナナしか食っていなかったのでむちゃくちゃ腹が減ってて
すぐに平らげてしまった。思わずう〜〜〜んマックっていいねぇと
唸り声をあげてしまった。
オレは描きかけの漫画を見せた。それを見たあと2人とも寝た。マ
ックがホテルみたいになってる。結局午後の3時か4時くらいまで
マックにいた。浅草まで来てマックにそんな長い時間いるなんてな
んだかもったいないような気もしたが涼しいのでいい。それに2人
でいられればどこでも良かった。
外に出るとやはり暑かった。しかし昨日と比べると湿気があまりな
く、蒸し暑い感じじゃないので良かった。
店を見たりしてまたお腹空いたからコンビニで食料調達。オレはた
まには贅沢しようと思い、おにぎりと冷やし讃岐うどんを買った。
彼女は洋風おにぎり弁当だったと思う。それをまた浅草寺で食う。
犬を散歩してる人が沢山いて犬同士が喧嘩していたり飼い主同士が
談笑したりしている。それを見ながらオレらは将来の事などを話し
た。キスもいっぱいして写真も撮った。暗くなるまでそこにいた。
8時くらいになってじゃあアイスを食おうという事になり、近くの
ampmに入り、オレは宇治金時、彼女は「シャブリ」という卑猥
な名前のソフトクリームみたいなやつを買った。
ベンチを探し、花やしきの前の小さいベンチに座った。ガツガツと
食った。一日目に有名人の手形があるとこの近くにアイスを美味そ
うに食っているおじさんがいて、それがうらやましかったのを思い
出した。夏だから夜でもやっぱ暑い。アイスが美味い。
つげ義春の「もっきり屋の少女」の話になりチヨジという少女の苗
字なんだったっけ?とオレが言ったら「あー私も今同じこと考えて
た」と彼女は言った。なんでか考えてる事がしょっちゅう被る。
乞食の方々が寝る場所の事でなんか話し合ったりしている。駐車場
の管理人を装ったりしている。銭湯に行く親子の姿。エプロンを着
たおばさん。浅草っていいなぁと思った。いつか結婚してこの街に
彼女と2人で暮らし、漫画家として働けたらいいなぁと話した。
もうそろそろ帰る時間。寂しくなってきて沢山キスをした。帰りた
くない。9時になったら帰ろうとか9時半になったら帰ろうとか言
っているうちにどんどん時間が過ぎていく。今日も帰らないで2人
でいようよと言ったらいいよと言ってくれた。
嬉しくてワーッ!って立ち上がった。もうかなり疲れていたけど2
人でずーっと居たいという気持ちに勝るものはない。
とりあえず彼女がコンタクトレンズを外すために隅田川の船乗り場
近くの便所に行った。ベンチに座り彼女はオレの肩に首を寄せて3
0分くらい寝た。
メシを買いにコンビニに入った。カップラーメンにお湯を入れられ
るコンビニを探してセブンイレブンに入った。彼女はほとんど目が
見えないのでゆっくり一緒に歩いた。オレはスーパーカップの北海
道 じゃが塩バター味ラーメンを買い、彼女はカップヌードルのチ
リトマト味。お湯をその場で入れてこぼれないようにゆっくり歩い
て浅草寺へ向かった。浅草寺の一番正面の階段を昇って賽銭箱の後
ろに座ったら警備員が来てここに座ってはいけないと言われ、仕方
なく違う同じ寺の場所へ移動した。何て言ってたのかよく聞こえな
かったけどたぶん上の方に座っちゃいけないんだと思い、階段に座
った。夜中に外で食うカップラーメンのうめェ〜のなんのって。あ
の味は忘れない。一気に全部食った。彼女が残したスープまで飲ん
でしまった。
ここじゃくつろげないので昨夜と同じ公園に向かった。公園に向か
う途中、今朝ゴミを窓から落としている気味の悪いおばさんの住ん
でるビルの前に差し掛かったがそのビルの2階の窓に気持ち悪い落
書きが沢山描かれているのに気づいた。しかし彼女は目が悪いので
見れなかった。途中にある公園にジャングルジムみたいなのがあり
そこで寝られるかなと思ったが無理だった。
公園に着き、昨夜と同じベンチに座った。1時間か1時間半くらい
彼女は寝た。そしてコンタクトレンズを付けた。彼女はつげ義春の
漫画に出てきそうな顔をしているが大人の女というよりもどっちか
と言うと「もっきり屋の少女」のコバヤシチヨジのような感じか。
気が付くとベンチの彼女の足のすぐ下に孵化したばかりの蝉がいて
驚いた。オレがフーッて吹くとジジジと鳴きながら飛んでいった。
2003年 8月 8日 金曜日
朝になるとまた公園がジムと化す。ジャングルジムを押し合う男女
やうんていで腰を振るおじさん。オレたちも結婚して浅草に住んだ
ら毎朝ここに来て運動しようねと言った。
駅の前でティッシュを配ってる女の人の近くで座っていたら上から
水が降ってきた。あれはなんだったのかよくわからない。丁度通勤
の時間でみんなあくせくと歩いている。そんな時間に自由にしてる
オレたちってなんか間抜けだなぁとも思ったがほんと楽しい。自由
人でよかった。昨日とは違うマックに入った。その店は朝でも朝マ
ックのメニューがなく、彼女は南仏風なんたらのセットを頼みオレ
はチーズバーガーセットを頼んだ。もう金が無いので彼女に貸して
もらった。昨夜もたしかジュース代借りたので彼女に借金800円
となった。店員が大柄の女でなんか怖い。「ミザリー」のキャシー
ベイツみたい。小学生の客にはタメ語で話してる。2階に上がりポ
テトを食べた。疲れててあまり腹が減っていない。どんな話をした
かよく憶えていないがオレはもう疲れまくっていたので猥褻なこと
ばかり言っていたように思う。でもオレは猥褻と言ってもあくまで
も彼女に対する性欲があるのみで、別にそこらに歩いてる女の胸が
大きいとかそんな事を言ったりしているわけではない。外でイカせ
てもらったのだってただ単にホテルに入る金がないので仕方なく外
でしてもらっただけであり、外でするのが好きだというわけではな
い。そこんとこよろしく。オレと彼女が入れ替わったら楽しそうと
かそういう感じの話から大林宣彦監督の映画「転校生」に出ていた
小林聡美が彼女に似てるという話に。とくに最近のポポンSの元気
ハツラツとした小林さんなんかは彼女にそっくりだと思う。いやも
ちろん彼女の方が可愛いんだが、全体的な雰囲気が似てると思う。
窓の外は大雨になっていた。でもにわか雨だったらしくすぐにやん
だ。結局5時半くらいまでずっと喋って店を出た。一日をマックで
潰すなんてもったいないなーと昨日と同じように思ったが一緒にい
れればいいか。真っ直ぐ駅に向かい、切符を買って電車に乗った。
オレが降りる駅の前の駅くらいで席が空いたので少しでもくっつき
たくて座った。そしてオレが降りる駅についてしまった。とうとう
お別れの時間。オレは「じゃあまたね」と言って彼女にキスして電
車を降りた。
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高尾天狗旅行記
2003年8月28日 木曜日
上野に行く予定だったが、前日になって高尾山に行きたいと彼女が
言うので高尾山に行くことになった。急に山へ登りたいなんて言う
んだから何か悩んでいるんだろうなとすぐわかった。
高尾へ行く途中の稲田堤という駅で待ち合わせる事にした。
昨日の昼の十二時から一睡もしていなくて、彼女の方も夜ほとんど
寝てなかったので最初十二時だった待ち合わせ時刻を大幅に伸ばし
て夕方の五時(四時だったかもしれない)に会うことになった。
結局一睡も出来なかった。彼女に会えると思うとやはりワクワクし
て寝られない。あとなんか急に高尾へ行きたいと言い出す彼女の気
持ちに対する不安みたいなものもあったと思う。
先にオレが着いた、売店のおばちゃんにおじさんが話しかけていて
最近の子供は喧嘩の仕方がわかっていない、と話している。
改札の前で十分か二十分ほど待っていると階段から彼女が降りてく
るのが見えた「おーい」と呼びかけようと思ったが恥ずかしいので
そのまま見ていたらトイレに入って、それからこっちに来てようや
く気付いてくれた(本当は気付いていたのかもしれない)。
稲田堤の駅周辺は少し下町っぽくて、彼女と手を繋いで歩いている
とこの町に住んでるような気分でほっとするというかなんというか
会う前の不安は忘れたような気がするが定かではない。切手を買う
ために郵便局を探してドジな事をしてしまった。郵便局の手前の建
物の入り口を郵便局だと勘違いしてしまい、刑事が張り込むような
かたちで陰から覗き込んでしまい恥ずかしかった。しかしこんな恥
ずかしい事も彼女となら楽しくて仕方ない。郵便局は閉まってた。
あーぁと嘆いているとおばさんが彼女に話しかけてきてここは何曜
日の何時が休みでなんたらかんたらと親切に教えたあと、「あ、聞
かれてもいないのに教えちゃってごめんなさい」みたいな、ありゃ
一体何だったんだろうと二人でわははと笑いながら駅に行った。
寝てなくて、これで高尾山に登るなんて無理だと思ったので今日は
一旦新宿の安いホテルにでも泊まって、山へは明日の昼に行こうと
言ってみた。勿論下心だってあった。付き合ってからまだ一度も体
を交わしたことが無かったからだ。寝ていなくて疲れていて休みた
いからという気持ちと、彼女が急に高尾山へ行きたいと言った事に
対する不安の気持ちからくる肉体への欲求と、その両方の理由で今
夜はどうしてもホテルに行きたかった。彼女は「高尾山に行きたい
よぉ〜。高尾山じゃなきゃ駄目なの」と言っていたが、二十九時間
以上も寝ていないこの体で高尾山を登るのだけは勘弁して欲しいと
いうオレの気持ちに同情したのか諦めたのか、今夜はホテルで泊ま
る事にしてくれた。京王線で新宿に向かった。
新宿は久しぶりだった。間違えて京王新線の新宿まで行ってしまい
それで降りたから普段とは違う場所に出てしまった。しかしもう新
宿ならどこ行ったって迷わない。眠くなかった。でも疲れてた。と
りあえずふらふら歩いて西新宿のビデオマーケットに行ってみた。
何故か邦画が無くてそのまま戻った。それでウェンディーズに入っ
た。びっくりした。ウェンディーズがあんなに美味い店だとは知ら
なかった。今年で一番美味かったかもしれない。思わず笑ってしま
う。懐かしい味っていうか、アメリカの味だった。ハンバーガーを
手に持ってる彼女の写真を一枚撮った。彼女が入った後に同じトイ
レに入り用を足した。同じトイレの同じ便器に座る事で、一緒に暮
らしているような気持ちになれる。
ホテルに行く前に、まず食べ物と飲み物を買いに行った。オレはコ
ンビニで百円のレモン水とスナック菓子を買った。彼女は違う店で
梅酒を買った。何故か梅酒の事を「ウメッシュ」と言っていた。そ
ういえば喫茶店のことを「きっちゃてん」とも言っていて、いつも
冗談でそう言っているのか本当にそうだと思って言ってるのか疑問
なのだが聞いてはいけないような気がする。オレもほんとは酒が飲
みたい。二人で一緒に酔っ払ったらさぞかし楽しいんだろなぁ〜。
こんな酒の飲めない自分には下戸コンプレックスのようなものがあ
って、酒を選んでる彼女を見ていて自分はなんて子供なんだろうと
思った。もちろん酒だけではなく、あらゆる面で自分は未熟なわけ
なんだけど。まぁ彼女のほうがオレよりもずっと年上なんだからこ
れでいいのかな。普段は年上だという事を忘れてかわいいかわいい
なんて言いながら頭を撫でたりしているので、たまには年上の女性
として彼女を見たほうがいいのかもしれない。オレなんかよりもも
っと沢山、いろんな苦労や経験をつんで現在に至るわけだからもっ
と敬意を持って接するべきか。なーんて大げさか。年齢なんかどう
でもいいや。
安いホテルを探した。新宿のあのホテル街をぐるーっと一周したと
かしなかったとか。一番安い、しかも、一番面白い名前であろうと
思われるとこに入った。
狭くて驚いた。まあカラオケとかあったって唄わないしベッドがあ
ればいいのかな。疲れていたのですぐ靴を脱いで横になった。
彼女は梅酒を飲んでいる。酒飲んでるのに全然オヤジ臭くない。と
いうかむしろ、可愛い。小学生みたいだった。オレが彼女に惚れた
理由の一番はこれで、物凄く純粋で優しいとこだ。純粋といっても
天然ではなくてちゃんと判ってくれる。ほんとに純粋で、それでい
て真面目で人の気持ちを理解できる、こういう人間は滅多にいるも
んじゃないと思う。そして無邪気で天真爛漫気味なとこも一緒に居
て落ち着かせてくれる。顔は文句なしに可愛い。だから彼女につい
て考えるとオレなんかが付き合っていいのかなぁと思う事もある。
彼女は心が全く汚れてない。だから自分の汚れた心が目立って見え
てしまう。でもこれは自分に厳しくもなれるのでいい。
彼女がシャワーに入ってしまうとオレは狭いこの部屋が怖くて仕方
なかった。五分ぐらいしたら呼んでと言ったのになかなか呼んでく
れない。怖いからテレビをつけてさっき買ったスナック菓子を食べ
て気分を明るくした。
ガチャっとカギが開いて彼女が呼んでくれた。ジーパンを履いたま
まドアを開けてびっくりした。白い!なんて白い身体なんだろうか
とたまげた。「あはは、なんで下履いたままなの〜?」と無邪気に
言う彼女。すぐ脱いで一緒に入った。
初めて触れる彼女の身体はつるつるしてて気持ちよかった。あ、風
呂だからか。身体を少し石鹸のついたタオルで洗ってもらったがす
ぐ湯船のお湯でサッと洗い流して、しばらく二人で入っていたけど
狭いのと寒いのとで出ざるをえなかった。というか風呂が苦手。
彼女が出るまでベッドに寝てじっとしてた。
浴衣?バスローブ?なんだかよくわからない変なやつを着て彼女が
出てきた。それを脱がせて一緒にベッドに入った。
何か話そうよ、という彼女を「んー?」とか言いながら抱いてしま
った。別にいやらしい気持ちだけで興奮していたわけではなく、初
めて、というかようやく彼女を抱けるんだなぁーという嬉しさっち
ゅうか、その、・・・ね、あの、なんというか、とにかくその時は身
体で愛し合いたくて夜中の三時くらいまで愛し合っていた。オレに
抱かれてる彼女が本当に幸せなのかどうか、少し不安だった。だか
ら少しでも気持ちが伝わるように、顔を触って、耳元で好きだよ愛
してるよと言った。彼女も「うん」「わたしも」と言ってくれた。
アナルを舐めてもらっていたら屁をこいてしまった。肛門を舐めて
いる彼女の口にぷすぅーと出てしまい、恥ずかしくてわははははと
笑った。自分の恋人の顔に屁をこくなんて最低かもしれない。
朝オレの方が先に目が覚めて、便所行って歯を磨いた。
そして目が覚めた彼女にキスをして抱いた。女性と一夜をともにし
たのは生まれて初めてだった。彼女はシャワーに入った。オレも入
ればよかったと後で後悔したんだが仕方ないか。
フロントから電話でチェックアウトまで二十分前なんで急いでくれ
と言ってきたので焦った。急いで服を着て出ようとしたが何故か彼
女はモタモタしていた。でもギリギリで間に合った。
2003年 8月29日 金曜日
外に出たら暑くてまいった。蒸し暑い。彼女はシャワー浴びたので
そんなにムシムシしないと言ってる。紀伊国屋書店でデザイン本や
映画のビデオ(のパッケージ)などを一緒に見た。
何食べようかまよったけど結局またウェンディーズに入ってしまっ
た。今年だけでもあと十回は行きたい。
二時半か三時くらいまで店に居た。それから電車に乗り、高尾へ。
ちゃんと寝たとはいえこの暑さの中で山へ登るというのは少々不安
もあったが高尾山口に着いたときにはもう夕方だったのでだいぶ日
ざしも落ち着いていた。すぐには登らず、駅周辺を歩いて、コンビ
ニで食べ物と飲み物を買った。空気が全然違う。うまい。
やっぱ暑くて自力で登るのはきついと思いケーブルカーに乗った。
オレたちは一番後ろの席に座り、ふもとから上がっていく様子をじ
っくりと堪能した。このケーブルカーは日本一急な斜面を登ってい
るらしい。山頂まで行くわけではなく、山頂とふもととの中間地点
くらいで止まる。
ケーブルカーを降りたとこは売店やビヤガーデンなどがあって、地
元の人たちは「ちょっと一杯」みたいな感覚でこのビヤガーデンに
来ているような感じに見えた。
オレらは見晴らしのいいベンチに座った。そしてその景色をバック
に写真を撮った。いい顔に撮れていたと思う。
けっこう涼しかった。彼女は服を全部脱いでダッシュした。オレも
それを追いかけてすぐ裸になりダッシュした。全裸で山道を疾走す
るカップルなんてオレたちだけだろう。というのは嘘で、しばらく
ベンチで休んだあと、歩いて頂上を目指した。
そんなに急な坂は無いけどやっぱハァハァ言ってたと思う。来て良
かったと思った。静か〜な山で二人。
蛸杉という名前が付いているでっかい杉の木がある。前来た時それ
が凄く印象に残っていたのでメモしといたはずなんだがなかった。
蛸杉の前に彼女を立たせパシャッと一枚撮ったら白いモヤがでかく
写ってしまった。男性二人で蛸杉の前でくっ付いている。あれはゲ
イだったのか?
高尾山には猿園がある。入ったことはない。この時も工事中で入れ
なかった。もうちょっと進むとでっかい階段があって、それを上っ
た。ある番組でお尻をグイッと?んで階段を上ると楽だと言ってた
からやってみたんだがあまり効果は感じられなかった。
さらに登っていくとお墓みたいなのがずらーっとあったり、鳥居が
あってその道の脇に灯篭が沢山あり、大きな石碑には「殺生禁止」
と書いてある。それを抜けると今度は壁一面にお布施をした人の名
前が書かれた板がズラ〜〜〜〜っと並んでいる。
彼女が疲れたら荷物を持ってあげようかと思っていたんだがあまり
疲れていなそうだった。でも出来るだけ彼女には優しくしてあげた
いと思ってる。当たり前か。
神社に着いた。入ってすぐ右にまだ新しいような石像があり、オレ
はそれに手を合わした。彼女も手を合わしていた。オレは彼女との
仲が永遠に続く事を願った。門に不動明王みたいな像が入ってて、
くぐると門の中に小さなスペースがあって、でっかい天狗の面が祭
られている(わかりにくくてごめん)。
それをさらに進んでいくと階段があり、派手な寺がある。赤い門に
緑の字ででっかく「厄除け開運」と書いてあって、門には天狗とか
らす天狗のこれまた派手な色彩の像が飾ってある。そして建物の石
段には「ヤクルト」とびっしり書かれている。ヤクルトヤクルトヤ
クルトヤクルト、って。いかがわしい事この上ない。
旗には「なむいずなだいごんげん」と書いてあった。でっかい天狗
の面とからす天狗の面もあって、香港のタイガーバームガーデンに
は及ばないものの、色が派手でとても修験道の山伏たちが修行する
ような場所とは思えない。
その石段でしばらく休んだ。ヤクルトをバックに寝ているオレの写
真を撮った。
何を話したかはまったく忘れてしまった。
頂上を目指して再び歩き始めた。もう真っ暗だった。
彼女が持ってきた懐中電灯をつけて登ろうとしたんだが、真っ暗す
ぎるのでよした。登ってる最中、オレの背中を誰かが引っ張った。
絶対彼女がやったんだと思ったがやってないと言う。だとしたら幽
霊なんだろうか。暗い道を登ったら危ないですよ、と注意してくれ
るいい幽霊なのかもしれない。もしくは天狗か。頂上へ行くのは明
日の朝にしようと言って諦め、またケーブルカーのとこまで戻ろう
と思い、元来た道を歩いていると網を持った男が沢山いる。どうや
らこの山は虫取り愛好家たちが夜な夜な集まる場所らしい。オレも
虫が好きなのでバッタなどを見つけながら歩いた。ケーブルカーの
とこに着くとオレたちは見晴らしの良いテーブル付きのベンチに腰
掛けた。「あれ火星だよ」と彼女が言うので見たら他の星より少し
だけ大きく光ってる星が確かにあった。"火星大接近"なんて言うも
んだからオレはてっきり月ぐらいのでかさで見れるんだと思ってい
たので拍子抜けしてしまった。
彼女は菓子を食べ始めた。オレは疲れてて食う気になれない。いつ
もだいたいオレの方が先に疲れてしまう。彼女は見かけによらずタ
フで、学生時代は長距離走が得意だったという。
間違えた、頂上に登ろうとしたのはもっと後だったかもしれない。
九時半でケーブルカーが最終だと言うのでみんな急いで乗り込んで
いる。オレも「おいおいほんとに高尾山で一泊するのか?」と焦っ
たが彼女は全く焦っていない。結局ケーブルカーはオレたちを残し
て行ってしまった。オレはほんとに焦った。もしかして殺されるの
ではないかとさえ思った。何故か急に高尾山へ行きたいと言い出し
しかも最終のケーブルカーには乗らず、山で一夜を明かすと言うの
だから。それとも何か他に重大な理由でもあったのか。
コウモリぐらいの大きさがある蛾が飛んでいて驚いたっちゅうに。
大きいテーブルがあるベンチのとこで休んだ。寒いので二人とも上
着を着た。彼女は横になって寝て、オレはテーブルに肘を枕にして
寝た。しかし寒くて寝付けず、すぐ目が覚めた。凄い疲れてる。
彼女も寒そうだが一応寝てる。彼女を起こさないようにじっとして
いた。数時間すると彼女も目が覚めた。ちょっと寒いから場所を移
す事に。子供の乗り物がある場所へいき、そこで話していたらあの
乗り物が三分おきくらいに音が鳴り出してうるさいのでそこはやめ
た。バッグを売店の中に隠し、貴重品と懐中電灯だけ持って山を探
検する事にした。あ、やっぱり山頂を目指したのはこの後だった。
外灯に照らされたとこにクワカミキリが居たので手で捕まえた。何
年ぶりだろう。懐かしくなった。キィキィと鳴いている。それを見
て彼女が怖がっているけどそんなの無視無視。オレは昔、小学校二
年の頃、友人が見事なゴマダラカミキリを持っていて「欲しかった
ら生協でビックリマンを盗んで来い」と言われ、何故かやつも一緒
生協行って万引きし、ゴマダラカミキリを貰った。それから一週間
ぐらいして奴は自分の親にその事を言ってしまった。当然うちにも
連絡が入り、オレは親に尻を叩かれ、夕飯も抜きになった。そんな
事を思い出しながら彼女と歩いていると、虫取りのおじさんが話し
かけてきて「何採ったの?ああ〜クワカミキリか。ははは」と言っ
て去っていった。虫を好きな人間に悪い人はいないんだなぁと思っ
た。それで今度はさっきとは違うルートを歩いたが結局どの道を行
っても迷わないようになっているようでオレらは山頂を目指した。
そして暗闇の中で何かに引っ張られて引き返したんだった。
虫取り愛好家たちは十人以上は居たと思う。三人くらいで居るやつ
らとすれ違ったあとオレがけものの鳴き声みたいな声を出してみる
と彼らは猫が居るとでも思ったのか、猫にウケそうな声を出してい
た。笑いそうになったが彼らの純粋な心をバカにすべきではない。
山から見下ろす下界の景色はきれいだった。彼女はここが故郷だと
言ってもおかしくないぐらいだ、と言っていた。彼女の故郷は福岡
の小倉で、彼女の家は山の絶壁にあってこんな感じだという。オレ
たちはキスをした。
2003年 8月30日 土曜日
神社のベンチで座っていると朝が来た。寺の鐘が鳴らされた。彼女
はまた寝た。そして起きた。そして山頂を目指して再び歩いた。
階段を上ると神社があり、やはりそこも天狗が祭られている。下駄
の形のやつがいっぱいあって面白い。さらに上を行くとまた小さい
神社があったがそこはあまり面白くないので無視して登った。
もう朝なので他の登山客もけっこういる。すれ違うときに「おはよ
うございます」って挨拶するのが礼儀だ。
頂上に着いた。七時過ぎくらいだったと思う。他にも二・三人居て
全部おじさんだった。みんなベンチに似ている。虫が結構いるのに
みんなそういうの気にならないんだろうか。とにかく暑いので二百
円もするジュースを買って飲んだ。全然見晴らしが良くない。ケー
ブルカーのとこの方が全然景色が良かった。以前友人と来た時には
すでに暗かったのでここがどういうとこなのかよくわからなかった
が、頂上なのに全然景色が良くない。景色が良くないとは具体的に
どういうことかっちゅうと、簡単に言えば下界を見下ろすことが出
来ないってことだ。だが、実はそんなことあんまり気にしていなか
った。今回は彼女と二人。ベンチに座ってぺちゃくちゃ話した。何
話したかは憶えてない。二時間くらい居たと思う。もっと長い時間
そこに居たような気がしたんだが実際にはそんなに時間は経ってい
なかった。山の時間は進むのが遅いようだ。売店が開店し始めた。
元来た道を戻ることにした。急な斜面を小走りでトットットットと
下っていたら「そんな風にして自分を可愛く見せようとしたって無
駄だよ」と彼女が言ったので焦った。別に可愛く見せようなんて思
ってねぇっつうの!(汗
もうかなり登山客が増えてる。天狗の下駄神社で写真を撮った。そ
してさらに降りた。おばさんのグループが写生をしている。オレも
射精しよっかな〜?とか言ったような。売店で豆が試食できて、そ
れが美味かった。天狗の面があったので買おうとしたが高かったし
あまり良くないので買わなかった。
ケーブルカーのとこに着いた。売店では団子などが売られていた。
少しベンチで休んで、そしてキップを買ってケーブルカーに乗り込
んだ。楽しかった山ともお別れか。たまにはこんな自然の中でのデ
ート(というか修行?)もいいなと思った。ケーブルカーは登る時
よりも若干早いスピードだったと思う。ふもとに着くと暑かった。
いや、そうでもなかったか?オレは味噌餡が入った一個百円の酒ま
んじゅうを買った。高尾山口駅で彼女は便所に入った。
電車に乗り酒まんを食べた。久しぶりに食べたんだがやっぱあの酒
粕っぽい風味が最高。彼女にも一口あげた。
新宿へ向かった。そして中野の名曲喫茶クラシックへ向かった。
中野に着いて、とりあえず何かクラシックで食うもんを買うために
ブロードウェイの地下に居た。なかなか美味そうな弁当があったけ
ど結局買わなかった。寿司が凄い美味そうでしかも安いんだがそれ
も買わなかった。オレはキャラメル&生クリームのクレープを買っ
て食った。クレープなんて買ったの何年ぶりだろう。ほとんどキャ
ラメルの味はしなくて生クリームだったが美味かった。美味いしボ
リューム満点で腹いっぱいになってしまった。いつもセブンイレブ
ンだからたまにはファミマで買おうって言ってファミマに行ったん
だが弁当が売ってないので仕方なくセブンイレブンに入り、彼女は
五目焼きうどん、オレは餡かけ五目焼きそばを買った。あとほんと
は飲み物持ち込み禁止なんだけど喉渇くと困るのでジュースを買っ
て長いストローをつけてもらった。
クラシックに入ると土曜日なので混んでた。うかつだった。とりあ
えず空いてる席に座ったが居心地がよくないので、左の奥の人たち
が店を出ると二人で荷物とコップを持ってそっちへ移動した。しか
しそこも広すぎて居心地がよくないので、店員が見ていないスキを
見計らい再び大移動して右側の奥から二番目の席に移った。ジュー
スは一気に飲んでしまった。彼女のとなりに座り足を伸ばした。
疲れていた。彼女はうどんを食べた。オレはやきそばを買ったこと
を後悔した。クレープでお腹一杯になっていたのにクラシックで彼
女が食べてる時に自分も彼女と一緒に食べたいという気持ちだけで
買ってしまったのであった。疲れて彼女に寄りかかった。「ちゃん
と食べさせて」と彼女が言ってるにも関わらずいいからいいからと
言って彼女に寄りかかって、後から考えたら凄くみっともなかった
なぁと思った。彼女はムッとしていた。しかし意外と鈍感なオレは
寄りかかるのはやめたものの、悪いとは思っていなかった。二人と
も長袖を着たままだった。クラシックは冷房が効いているので丁度
いい。もう本当に疲れていた。夕方になり真っ直ぐ帰る事にした。
電車に乗り新宿に着いた。山手線のホームの入り口でキスをしたあ
と、急に寂しくなりホームまで上がっていって、電車に乗り込んだ
彼女に手を振って別れた。
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